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5分で分かる管理手法

 実践!生産革新道場:第369回:異常の定義をシンプルにして理解させよ


1:作業標準書に異常を細かく記載した

日本人駐在員から次のような相談を受けました。「昨日、工程内で大量不良が発生しました。この製品は納期が逼迫しているために予定通り出荷することができず、お客様に迷惑を掛けてしまったのです。管理者に原因を確認させたところ、作業員が異常に気が付かなかったため班長に報告せず、そのまま生産を続けてしまったとのことでした。対策として、作業員に異常時の報告を徹底させると言うのですが、本当にこの対策で良いのか心配です」私はこの問題を研修のテーマに取上げて、担当の管理者を呼び出して事情を説明させました。管理者は「今回の不良は製品に傷が付いていたのです。作業員はこの傷を見ても異常だと思わず、そのまま生産を続けてしまったのです」と説明しました。


「それでは対策はどのようにするのだ」「作業員が異常を理解していないので、作業標準書に異常の定義を細かく記載することにしたのです」私は作業標準書を持って来させて確認したところ、異常の定義の項目が20項目もあったのです。私は思わず「なぜこんなにたくさんあるのだ」と聞いたところ、「今後は僅かな異常でも確実に報告させるために考えられる異常を全て盛り込んだのです」と答えました。「傷などの外観異常の他に機械に振動がある、機械に熱があるなど、機械の異常も記載してあるぞ」「その通りです。考えられる異常を全て盛り込んだのですから、作業員が作業標準書通り作業を行えば異常は必ず報告するはずです。」と管理者は自信満々に言い切ったのです。


2:管理者の3項目の勘違い

このように管理者の中には問題が発生すると、対策を作業標準書に記載しただけで完全に再発防止が出来ると勘違いしている人が多いものです。私は管理者を集めて次の不備な事柄を指摘しました。


1) 異常項目が多すぎる

作業員が異常の項目を覚えていれば意識することが出来ますから、異常を発見した時に「これは異常だ」と直ぐに判断できます。しかし作業員は20項目もの異常項目を全て覚えることは出来ません。「覚えなくても作業標準書に書いてあるから、異常と感じたらこれを見れば良い」との意見もありますが、意識していない場合は異常と感じないので、作業標準書を確認しませんから、異常を検出できない可能性が高いのです。


2) 異常の定義が難しい

多くの項目を限られた作業標準書のスペースに盛り込んだために、異常の定義を簡略化せざるを得なくなり、逆に意味が分かり難くなっている項目がありました。作業員にインタビューしたところ「簡潔すぎて意味が良く分からない」「作業標準書の文字が小さくて読み難い」などの意見がありました。


3) 異常の検出と報告は別である

作業員が異常を発見するのと、その異常を上司に報告することは全く別の問題です。

作業員が異常を発見しても「上司が忙しそうで報告できない」「上司に報告すると怒られる」「生産優先だから品質問題は後回しだ」などと考えていたら、いくら作業標準書に異常を記載しても、異常の報告が上がってこないのです。


集まった管理者に上記の事柄を指摘した後、さらに次の項目を指摘して、具体的な対策を指導したのです。


1)異常の定義をシンプルにする

頻繁に発生する異常や過去に発生した異常などを絞って作業標準書に記載させ、その他は「異常とは普段と違うこと」と定義することにより、異常を意識させて確実に発見できるようにします。


2)報告を行わせる雰囲気作りを行う

異常を発見したら遠慮したり、躊躇したりすることなく、すぐに報告できる雰囲気を作るようにします。


このように作業員が異常を確実に発見して報告させるにはハード面である「シンプルな異常の定義作り」のとソフト面である「報告できる雰囲気作り」の2つの対策が必要なのです。