実践!生産革新道場「対策に行き詰まったら現場で対策会議を行え」
1:対策を行った問題が再発した
ある工場で大量の不良品が発生しました。この製品は工程の中である薬品を混ぜるのですが、薬品Aを入れるべき製品に薬品Bを入れてしまったのです。原因は作業員が薬品を入れ間違えたのですが、すでに同じ問題が過去に3回も発生しており、そのたびに対策を実施してきたのです。今回も同じミスが発生したため、私の研修で取り上げることになりました。私は「この薬品の入れ間違えのミスは過去に3回も発生しているではないか。3回の対策書を持ってきなさい」と指示しました。そして過去の対策を時系列で確認したのです。
第一回目:作業標準書の改訂を行った
以前は作業標準書に薬品を混ぜる方法を明記してなかったため、「薬品を混ぜる前にAとBの名称を必ず確認する」と追記しました。そしてこの作業標準書を元に作業員の教育を行いました。
第二回目:識別管理を実施した
薬品AとBは同じ色で同じ形の容器に入っており、マジックの手書きでA、B と書いてありました。容器の置き方が悪いと文字の部分が後ろ側になり、作業員から見えなくなってしまい、取り違いが発生する可能性がありました。そこで容器の色をA は緑色 B は黄色の色に決めて識別管理を行うことにしたのです。
第三回目:置き場所を区別した
識別管理を行なってもミスが発生したので、原因を調べたところ、Aと B の容器を同じ箇所に置いており、作業員が取り間違ってしまい、そのまま確認せずに混ぜてしまったことが分かりました。対策として容器の置き場所に衝立を作り、AとBを衝立を挟んで分けて置くようにしたのです。
管理者は「作業員のミスを防ぐために、過去にこのような対策を行ってきましたが、今回も同じミスをしてしまいました。もちろん作業標準書の教育を行いましたが、これは初回の対策でも行ったことです。人間は必ずミスをしてしまうので、対策会議で新たな対策を考えたのですが、誰もアイディアを思い付かず困っています」と諦めムードとなっていました
2:現場で対策会議を実施させた
管理者は新たな改善に行き詰っていたので、私は次のように質問しました。「対策会議はどこで行ったのだ」「会議室です」「なぜ会議室で対策会議を行ったのだ。ミスを誘発する要因は会議室ではなく、現場にあるはずだ。まず現場の作業を実際に確認して、必要なら自分で作業を行い問題点の洗い出しを行うべきだ」と指摘したのです。私は管理者を集めて現場に行き、作業の様子を観察させました。
作業員は測定器の調整のために手元を見ていますが、薬品は測定器の上にある棚に保管してあるため、取り出す時には首を上げて手を伸ばして取るようになっています。作業を観察していると測定器の調整が難しい場合は、測定の方に視点と意識が集中しているため、思わず薬品を見ずに手を伸ばして取っている作業員がいたのです。私は管理者に「作業員が無意識に手を伸ばして薬品を見ずに取っていたではないか。なぜ作業員は見ずに取ってしまったのだ」と管理者に質問しました。
管理者は「置き場所が問題だと思います。測定器より高い位置に置いてあるから、無意識に取ってしまうことがあるのです。」と答えました。管理者は直ぐに協議を行い、作業員に見やすい位置を確認したあと、薬品の位置を測定器の横に変更したのです。このように対策が行き詰まった時には、原点である現場に立ち返ることで、対策のヒントを得ることが出来るのです。