実践!生産革新道場:第323回:生産性向上のために日常の手抜き管理を戒めよ!
1:改善結果が悪化している
ある工場で生産性向上の活動発表を行っており、管理者が「このラインでは機械から製品を取り出したあと、測定器で測定を行っていました。しかしこの測定を治具に切り替えたので、測定時間が短縮できて生産性が向上しました」との説明がありました。発表のデータを見ても改善後の生産数量が増えており、十分な効果があることが分かったのです。私は「とても良い改善だが、生産数量のデータが2週間前となっている。先週と今週のデータを見せなさい」と指示しました。管理者が持ってきた日報を確認すると3日前から生産数量が下がっていたのです。管理者は「これは作業員が退職して新人が入ったためです。一時的なもので直ぐに回復します」と言い出したので、私は「現場で確認する」と管理者を連れて現場に行き、作業状態を確認したのです。
2:管理者と班長が手抜きをしていた
現場で作業員に直接、聞いたところ「私はこの工程を担当して1年以上経ちます」と言ったのです。4M記録を確認すると、作業員の変更は無いことが分かりました。私は管理者に「お前は新人と言ったが、違うではないか」と詰問しました。「すみません、勘違いでした」「それでは、なぜ生産数量が下がっているのだ」「よく分かりません」作業を観察してみると、作業員は毎回、機械から製品を取り出すと、治具を置いてある箇所まで歩いて行き測定を行っていたのです。「なぜ機械と治具の距離があんなに遠いのだ。ムダ歩きが多すぎるぞ」と指摘したところ、管理者は「いや、あれは隣のラインの治具です。このラインの治具は調子が悪くなり、現在修理中なのです」と言い出しました。
「いつ修理が終わるのだ」「メンテナンスが修理中ですが、まだ分かりません」「この場で電話してメンテナンスに修理日時を確認せよ」管理者はメンテナンスに電話して、話をしていましたが「すみません、修理中の治具は別の治具でした」と言い出したのです。
「それではなぜ隣の治具を借りているのだ。理由を確認しろ」管理者が作業員に確認したところ「3日前から治具が紛失しました。作業員は隣のラインの治具を借りれば良いと思って班長には報告していませんでした。」と言ったのです。私は「班長は何をしているのだ。作業員が報告しなくても、作業を見れば分かるではないか。直ぐに班長を集めて確認せよ」と指示したのです。集まった班長は口々に「治具が紛失したのは知らなかった」「報告しない作業員が悪い」「夜勤で紛失したのに違いない。夜勤の班長が悪い」と言い出し始めたのです。
1:検査でバリ取り作業を行っていた
生産性向上の活動発表では良い結果が出ていましたが、現場では改善した治具が紛失したまま作業を行っていたため、生産数量が下がっていたのです。このように生産性向上の活動で良い結果が出ても「現場の問題を把握していない管理者」「作業員が隣のラインの治具を使っていることに気付かない班長」「治具が紛失した問題を報告しない作業員」など、管理者、班長、作業員の問題意識が低いと改善効果を維持できないのです。
3:生産性向上のために手抜き管理を戒める
今回の問題では作業員が問題を報告しなくても「班長が毎時間、生産数量と目標数量を比較して、問題があれば現場で確認する」「管理者が日報確認時に生産数量が未達であれば、班長に問題点を確認する」など、日常業務を正しく行なっていれば、治具の紛失に容易に気が付いたはずです。私はこのような日常業務を手抜きしているようでは、生産性向上は無理であると判断して、管理者を班長や作業員のいる前で次のように詰問しました。「毎日、目標数量を達成させる責任者は誰だ」「私です」「日報によると3日前から数量が未達となっているが、お前はその原因を知らなかった。日報に承認のサインを入れながら、なぜ知らなかったのか」管理者が黙っているので「答えられない理由は2つしかないだろう!日報を見ずに承認のサインをしているか、数量が下がっているのを知りながら、確認を怠っていたかだ。どちらなのだ。ハッキリ言え!」と一喝したのです。この様子を見ていた班長や作業員も「これは手抜きをすると怒られる」と引き締まった雰囲気を感じたので、「今後の手抜き管理を防止する対策をこの場で班長と協議せよ」と指示したのです。日常業務に手抜きが横行する現場では生産性を向上させることは出来ません。手抜きの対処には「一罰百戒」として、管理者を厳しく指導することが必要です。