他社の事例を自社に活かせ
1:読者からの相談
社内の5Sが向上しないので他社に見学に行かせました。時間を割いて多人数で行かせたものの、帰ってきてから数行のレポートが出てきただけで、他に何もしていません。せっかく行かせたのに何も学んで来なかったと思うと残念です。
2:他社の見学が役立たない理由
管理者の中には他の会社の経験がないため「井の中の蛙」状態になっていることがあります。このような管理者に見聞を広めて貰おうと、他社への見学を行わせることが良くあります。しかし次のようなケースで見学が役に立たないことがあるのです。
2.1:見学の目的や意味が分からない
他社見学の意図が正確に伝わっていないケースです。いきなり「他社に行って勉強してこい」とだけ言われて、事前の情報や予習も無いまま送り出されます。当人は良く分からないまま見学しているため質問も出来ず、見るべきポイントも分かりません。帰社後の反省会もないまま現場に戻ります。
2.2:自社の方が優秀だと思っている
自分の管理方法が最も優れていると勘違いしており、他社の良いところを認めません。プライドが高すぎて、他社の良い点を認めることが自分の敗北と繋がると思っています。そのため他社見学の際には、相手の悪いところばかりを見てくるために、自社に役立てることが出来ないのです。
2.3:他社の良い点が言葉で理解できない
管理者のレベルが低すぎて他社の良い点を見ても「凄い」と感じるだけで、何が凄いのか言葉で表現できません。感情で物事を見ており、理屈で考えていないからこのようになってしまうのです。この管理者に見学の様子を説明させると「良かった」「素晴らしかった」と感嘆詞の羅列となります。何がどのように凄いのか言葉で説明できないため、他の人に正確な状態を伝えることが出来ず、結局自分だけが感動して終わってしまうのです。
2.4:自社には応用できないとの諦め
他社の良い事例を見て理解できても「どうせ自社とは違うから応用できない」と最初から良い事柄を自社に応用することを諦めています。「製品が違う」「会社の規模が違う」「システムが違う」など理屈を並べ立てて「あれはあの会社だから出来るのだ。我が社ではとうてい無理だ」と考えてしまうのです。
3:他社の良い事例を応用させる方法
他社への工場見学は大切な機会ですから、次のようなステップで進めます。
3.1:向上心のある人を選抜する
出来の悪い管理者に他社を見させて刺激を与えようとしても、前述の理由で失敗することが多いのです。他社の見学の目的は個人への刺激より、他社の良い事例を自社に展開して会社の利益を上げるためと定義して、向上心のある人を優先的に選抜します。
3.2:事前の予習会を行う
工場見学の目的と意味を明確に理解させます。そして行き先の工場の概要を説明した後、具体的にどのような点が優れているのか。どこを見ればよいのか、どのような質問をするのかなどを事前に協議させまとめておくことが必要です。この場合は質問を分担して箇条書きにしてリスト化しておくと効果的です。
3.3:積極的に質問を行わせる
工場をぼんやり見ているだけでは意味がありません。相手に積極的に質問して情報を引き出すようにします。自社の困っている点を率直に話して相談に乗って貰うのも良い方法です。
3.4:反省会を行う
見学終了後に反省会を行います。反省会の内容は各自が学んできた良い事例を発表し合い、これを自社に展開する具体的なスケジュールをまとめます。さらに良い事例や感じてきたことを部下に説明、教育するスケジュールも作成します。