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         ストライキの真の原因と管理の力量

 

 

先日、起きた部品工場でのストライキですが、警官隊を投入して排除した様子をテレビや新聞をご覧になった方も多いと思います。またこの模様は日本でも報道されました。私もテレビのニュースで見ましたが警官が警棒を使って排除して行く姿には驚きました。従来ですとこのようなストライキの場合は警察は介入する姿勢を見せず傍観しているケースが多かったのですが、今回は道路をふさいだり公共施設を壊したりしたとはいえ、当日の夜に警官隊を投入して排除してしまう異例ともいえる処置であり、現政権の姿勢を垣間見たような気がしました。

一度ストライキが発生してしまうと会社に与えるダメージは相当なものがあります。ストライキ中は生産が計画通りに進みませんからに「納期」「生産数量」に大きな影響があります。また最近は小さなストライキでもマスコミに取り上げられることが多く、海外の取引先にも瞬時に情報が伝わります。また口コミによるウワサもアッという間に広まります。取引先では当然のことながらストライキによる「納期」「数量」に異状が出ることを心配しますし、今後の安定的な数量の確保を考えた場合、ストライキが発生した会社からの購入数量を減らす方向に持って行く可能性もあります。社内的にもストライキが収まった後でも、職場の人間関係、特に日本人管理者とタイ人管理者、タイ人管理者と一般従業員の間には大きなしこりが残ります。これはそのまま職場の雰囲気となり、従業員のやる気を奪い現場の士気も下がってしまいます。わずかな規模のストライキでも会社に与えるダメージは長期にわたって多くの影響があります。

一般的にストライキの多くは昇給、ボーナスなどの改定に金銭的に納得できなかった従業員が会社に反発して発生すると思われています。しかしストライキの原因は本当にそれだけなのでしょうか。私はそのような単純な理由ではないと思います。何百人、何千人の人間が一斉に会社に反発するのですから、ここには日々の会社に対する感情的な反感が含まれているはずです。すなわち会社の日々の管理に対して従業員がストレスを感じ、会社に対する反発感の雰囲気が醸成され、そして給与の改定が発火点となり爆発しストライキに結びついたと考える方が自然です。ですから給与はあくまでも発火点であり真の原因は「日々の管理ミス」と断言できるのではないでしょうか。

 

実際に給与が原因と言われている過去の大きなストライキも良く調べてみると人事部と従業員の感情的なもつれや、管理者と従業員のコミュニケーションの途絶が遠因になり、給与の改定時に爆発してストライキになったケースもあります。また人事部の縁故採用、一方的なひいき、そして経営者の公私混同が従業員の反発を招いてストライキになったケースもあります。

このように考えて行くと当然のことですが、日々の管理がいかに重要かが良く分かると思います。特に人事部、総務部と従業員の関係、日本人管理者とタイ人管理者の関係、そして社内のコミュニケーションは本当に大切な事柄です。ですからもし企業の日本人管理者が「自分は技術担当だから管理は人事部のタイ人に全て任せてある」とこれらに関心を持たないようでは困ります。海外の駐在員は技術だけではなく好むと好まざるに関わらず管理全般を担当せざるをえません。日本人管理者は企業の利益を上げるために赴任しており、そのために必要な事柄は何でもこなさないといけない立場にいます。例えば読者の皆さんは次の事柄を把握しているでしょうか。

1 昼食時にタイ人管理者がどのメンバーと食事を取っているか注意して見ている。
2 これによりグループの様子を確認している。このグループのメンバーが入れ替わった時になぜ入れ替わったのか原因をつかんでいる。
3 休日に一緒に遊びに行っている管理者のグループを把握している。
4 これらのグループの対立、協調の度合いを把握している。
5 人事担当者や工場長クラスの要となる管理者がどのグループに所属しているか知っている。

これらは俗に言う「非公式の組織」を把握するために日本人管理者は日常的に観察しておかなければいけない事柄です。本来、企業とは組織図の通りに動かなくてはいけないのですが、日本の企業もそうであるように現実的には社内での個人の力関係、人間関係を無視するわけにはいかず「非公式の組織」を把握した上で根回しを行いながら仕事を進めています。タイでは日本以上に人間的な関係で物事が動いていますから、組織の上に立つ管理者としてはこれらの状況をリアルタイムで把握しながら適切なコミュニケーションを取り管理を行う必要があります。確かに昼食時にグループのメンバーの席順の状況を見るなどは本当に細かいことですが、「管理」とはこのように細かいことを日々積み重ねて行かなければなりません。プロの管理者は普通、会社に一番最後まで残っており終業後に雑談してる様子からグループ構成を観察したり、誰がいつも最後まで残って仕事をしているか、そしていままでよく残っていた人が急に早く帰るようなったり、また今まで早く帰っていた人が急に遅くまで仕事をするようになったりなどの変化を細かく見ています。

 

さらに終業後、男子従業員が行っている「タックロー」(タイのボール遊び)のメンバーを毎日見ており、その中に入っている管理者に変化が無いかを確認している管理者もいます。これはどの管理者と従業員が親しいか、グループ構成を見極めるために行っているのです。これらの細かい確認はプロの管理者からすれば当然のことなのです。

 

景気の後退に伴い、今後は労働争議などが多くの問題が発生してくる可能性もあるでしょうし、下経営力の差で同業種でも業績の良いところ悪いところの差がハッキリ出て来るようになってきました。まさに各企業で本当の「管理の力量」「プロとしての管理者」などの資格を問われる時代に突入したと言えます。