品質管理の基礎知識(その6)
先日、私がある日系工場で社員教育の仕事を行なっていたときのことです。たまたまラインで不良が発生したのですが、この対応が大変すばやく見事でした。不良を発見した作業員は直ちに上司に報告、上司は直ぐに対策会議を招集、応急処置が決まると直ぐに現場に走り作業員を緊急招集、不良の状況を手短に説明して対策を指示していました。不良発見からわずか40分程度で不良の状況と応急処置が全社員の知るところになったのです。
このように書くと「当たり前ではないか」と思われがちですが、現実問題として不良発見からわずか40分で現場に対策が伝達できるのは、なかなか出来ることではありません。
不良発見から対策まで良く起こりがちなパターンは次の通りです。
1 通常は不良が発見されても上司に報告が来ない。
2 報告が来ても「じゃあ対策会議の時間を決めて、、、」とのんびり対応する。
3 現場の対策より対策会議で使うデータをまとめる方に時間をかける。
4 対策会議の出席者が「忙しい」「自分は関係無い」など出席を渋るため、その根回しや時間調整のような意味のないことに時間を無駄にしてしまう。
5 対策会議は各課の非難の応酬となり対策が出てこない。
6 対策会議では「また同じ不良か、、」「どうせ良くならないのだから、、」「前も同じ不良で対策に失敗したから、直しようがない、、」と投げ出した雰囲気が強く、本気で対策を考える人がいない。
7 製造とQC、QAが馴れ合いになっており、製造は「どうせ守らないけど、QC、QA向けに適当な対策を出しておくか」と考え、QC、QAは「製造は守れもしない対策を出してきたが、どうせフォローしないのだからこれで良い」とお互いに「守れない、守らない対策」と知りつつ、妥協している。
8 応急処置と恒久対策の区別が付かず、最初から完璧に解決しようとするため「日本に問い合わせる」との連絡待ちになり、対策が遅れる、問題そのものを忘れてしまう。
9 対策が出ても5W1Hでまとまっておらず、責任の範囲、責任者が不明確である。
10 対策が現場に伝わらない、伝わっても守られない。
11 フォローを行なわないため対策が途中で消えてしまう、、、、
わずか40分のクイック・アクションを行なった会社は、以下の2項目が優れていました。
1 品質意識が高い
「不良の対策は時間との勝負!」と心得ているのは作業員、監督者、管理者に高い品質意識があるからに他なりません。この品質意識を高めるには私が何回も繰り返している通り、日々の社員教育の積み重ねしか有り得ないのです。これを理解して社内で品質の教育を行なうことが、品質意識向上の唯一絶対の方法なのです。
2管理者の気配りが優れている
この会社の対策会議では原因と対策の話し合いのみで「誰が悪い」「どの課が悪い」などの非難の応酬は一切ありませんでした。また会議の終了時に議長は「不良を急いで持ってきてくれてありがとうございました。おかげで私たちは品質に対する勉強を重ねる事が出来ました」と不良を報告した担当者に丁寧にお礼を述べていました。これは現場でも同じで、上司は不良を発見して報告に来た作業者に「不良を見つけてくれてありがとうございました」とお礼を述べるようにしているのです。作業員はこの一言で嬉しくなり、また小さな異常があれば直ぐに報告に来るようになる訳です。社員教育が品質管理の要と言うことが改めて良く分かった出来事でした。