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        有史以来、初めて企業で働く世代

 

タイに駐在員として赴任してまず最初に戸惑うのは、日ごろ接しているタイ人従業員の考え方や発想が私たちとずいぶんと異なるケースが多いということです。例えば不良品が発生したため対策会議を行い、なぜ不良品が発生したのか原因を聞いてみると「納期に間に合わせるために急げと指示され、品質管理への余裕が無かった」「目標数量がきつすぎる」「作業員の質が悪い」「人員が少ない」など問題の本質から外れた部分の意見が多く上がったり、不良発生の原因を突き止めてその対策を協議するのが目的なのにもかかわらず、単に責任回避のための非難に終始する様子を経験するたびに「なぜこのような発想になるのだろう?」と悩むことになります。また納期の追い込みで人が足りないため残業を依頼したところプライベートの理由で断られてしまったり、原料在庫がなくなりラインに影響が出てから「材料がありません。どうしたらよいのですか?」と初めて言われ「なぜもっと早く報告しないのだ」と思わずカッとなってしまった、などの経験はみなさんお持ちだと思います。

なぜこのように発想が異なるかといえば主な原因の一つとして、今私たちと働いているタイの人々は「タイの歴史始まって以来、初めて企業で働く世代である」ということがあげられます。これはタイに限らず発展途上国の日系企業の駐在員として管理を進めて行く上でぜひとも頭の中に入れておいてほしいと思います。

例えば私の祖父も父も会社員でしたが、今でも父が月末に仕事を家に持って帰り、ねじり鉢巻きで夜遅くまで仕事をしていた姿を覚えています。このような家庭環境で育てば「会社は遅刻や欠勤をしてはいけない」「休日出勤や残業はあたりまえである」「多少の病気では会社は休めない」「家庭の都合より会社の都合が優先されることがある」などが子供心にも無意識に植え付けられていますから、これらのことは誰かに説明してもらわなくても感覚としてすでに理解しています。ですから入社後はすぐに会社の仕事を優先するような考え方、発想になって来るわけです。

しかし今私たちと仕事をしている人々は農業中心の生活を何千年も続けていましたから、「雨が降れば仕事は休み」「家庭や村の行事は仕事より大事」など感覚が体に染みつています。これは良い悪いの問題ではなくお互いの国の歴史が違ってきたのですから仕方の無いことです。

同じ日本人でも一世代異なれば発想、考え方にも大きな違いがあり、上司と部下が理解しあうことはお互いに大変なことです。まして人種、文化、習慣、歴史的背景、年齢、社会経験、学歴、言葉情報環境が違う人々とは考え方や発想が異なることが当たり前であり、仕事とは言えわずかな期間でこちらが期待しているような考え方、発想になるのはむしろ不思議なくらいです。このような現状を改善するには自社で社員教育を行い、少しでも早くお互いに理解し合い、会社の経営方針に沿った考え方をしてもらう必要があります。

御社で会議の席に座っている管理者の方々を見回してください。同じ管理者とはいえ日本の本社より年齢もずっと若く、経験もはるかに少ない方々ばかりだと思います。このような人たちとともに日本と同じ品質と納期の製品を生産して行くためには日本人駐在員には高度な管理手法が必要となります。これからこのコラムで発展途上国で有効な管理手法を皆さんと一緒に考えていきたいと思います。